「北海道大学大学院情報科学院修士課程入学試験」(令和6年8月実施)の情報理工学コース「基礎数学」対策ページです。
分野別対策
基礎数学
線形写像
参考にしたサイトは以下のとおり。
うさぎでもわかる線形代数 第13羽 線形写像(後編) 核空間・像空間 線形写像の全射・単射について _ 工業大学生ももやまのうさぎ塾.html
- 集合\(V\)から集合\(W\)への写像があるとする。
- 全射:\(W\)の要素すべてが\(V\)のどれかの要素と対応しているような写像。
- 単射:\(W\)のある要素に写すための\(V\)の要素は1つしかない(2つ以上存在しない)写像。
- 全単射:全射の条件、単射の条件の両方を満たすような写像。\(V\)の要素と\(W\)の要素は1対1の関係になる。
- \(f(x) = Ax\)を満たす行列\(A\)(表現行列)が正則であることと、\(f\)が全単射であることは同値である。
線形独立・線形従属
参考にしたサイトは以下のとおり。
うさぎでもわかる線形代数 第06羽 1次独立・1次従属 _ 工業大学生ももやまのうさぎ塾.html
- 線形独立
- ベクトルの集合が線形独立であるとは、集合内のどのベクトルも他のベクトルの線形結合として表せないことを意味する。
具体的には、ベクトル\(v_{1}, v_{2}, ..., v_{n}\)が線形独立であるとは、次の方程式が成り立つときである:
\begin{align} c_{1} v_{1} + c_{2} v_{2} + ... + c_{n} v_{n} = 0 \end{align}
- ここで、すべてのスカラー\(c_{i}\) が0である場合に限り成り立つ。つまり、
\begin{align} c_{1} = c_{2} = ... = c_{n} = 0 \end{align}
- 線形従属
- 一方、ベクトルの集合が線形従属であるとは、少なくとも一つのベクトルが他のベクトルの線形結合として表せることを意味する。
つまり、ベクトル\(v_{1}, v_{2}, ..., v_{n}\)が線形従属であるとは、次の方程式が成り立つときである:
\begin{align} c_{1} v_{1} + c_{2} v_{2} + ... + c_{n} v_{n} = 0 \end{align}
- ここで、少なくとも一つの\(c_{i}\)が0ではない(つまり、非自明な解が存在する)場合である。
- 具体例
- 3次元ベクトル \( a, b, c, d \) の中から重複を許して3つ選んで横に並べ、階数(ランク)が1, 2, 3となる正方行列 \( A_1, A_2, A_3 \) をそれぞれ作れ。
- それら3つの行列 \( A_1, A_2, A_3 \) のうちどれかが方程式 \( A_i x = 0 \) (\( i = 1, 2, 3 \)) において非自明な解 \( x \neq 0 \) を持つか、理由とともに述べよ。
- 3つのベクトル \( a, b, c \) を横に並べてできる正方行列 \( B = (abc) \) に対して \( B \) の零空間 \( \text{Ker}(B) = \{ x \in \mathbb{R}^3 \mid Bx = 0 \} \) の非零要素を一つ挙げよ。さらに、\( \alpha, \beta \in \mathbb{R} \) に対して、\( x, y \in \text{Ker}(B) \) ならば \( \alpha x + \beta y \in \text{Ker}(B) \) を示せ。
- 前問と同じ正方行列 \( B \) に対して、方程式 \( Bx = \begin{pmatrix} -1 \\ -2 \\ -3 \end{pmatrix} \) を解け(一般解を求めよ)。
ベクトル\(v_{1} = (1, 0)\) と \(v_{2} = (0, 1)\) は線形独立である。なぜなら、
が成り立つのは \(c_{1} = 0\)かつ \(c_{2} = 0\) のときだけだからである。
ベクトル\(v_{1} = (1, 2)\) と \(v_{2} = (2, 4)\)は線形従属である。なぜなら、
という関係があり、非自明な解 \(c_{1} = 2, c_{2} = -1\) が存在するからである。
問題
(1)の解答
ランク1 の行列:
すべての行が同じベクトルに比例しているため、ランク1である。
ランク2 の行列:
2列目と3列目が同一であり、ランク2である。
ランク3 の行列:
互いに線形独立な3つのベクトルで構成されているため、ランク3である。
(2)の解答
行列のランクが \( n \) より小さい場合、方程式 \( A_i x = 0 \) は非自明な解を持つ。
ランク1: \( A_1 x = 0 \) は自由度が2あり、非自明な解を持つ。
ランク2: \( A_2 x = 0 \) は自由度が1あり、非自明な解を持つ。
ランク3: \( A_3 x = 0 \) は自由度が0で、非自明な解を持たない。
(3)の解答
行列 \( B = \begin{pmatrix} a & b & c \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 8 & 10 \\ 3 & 10 & 13 \end{pmatrix} \) のランクは2である。したがって、零空間 \( \text{Ker}(B) \) は次の非自明な解を持つ:
この解は、\( Bx = 0 \) を満たす。
次に、任意のスカラー \( \alpha, \beta \in \mathbb{R} \) に対して、\( x, y \in \text{Ker}(B) \) ならば \( \alpha x + \beta y \in \text{Ker}(B) \) であることを示す:
これにより、線形結合の性質が示された。
(4)の解答
まず、行列 \( B \) と定数ベクトルを組み合わせた拡大係数行列を構築する:
次に、この行列を行基本変形を用いて簡約化する。まず、1行目をそのまま維持し、2行目と3行目から1行目の2倍、3倍を引く:
次に、2行目から3行目を引く:
ここで、この行列のランクは2であり、自由度が1つあることが分かる。
次に、2行目を4で割る:
1行目から2行目の2倍を引く:
この簡約形から、解を次のように読み取ることができる:
変数 \( z \) を自由変数とし、\( z = t \) と置くと、
したがって、一般解は次のように表せる:
問題
\( A \) を \( m \times n \) 行列、\( B \) を \( m \times k \) 行列とする。 また、\( X \) を \( n \times k \) 行列でその要素として変数を持つものを考える。 このとき、行列方程式 \( AX = B \) が解を持てば、\(\mathrm{rank} \, A = \mathrm{rank} \, (A \, B)\) であることを示せ。 ただし、\( A \) の列ベクトルを \( \mathbf{a_1}, \dots, \mathbf{a_n} \)、 また、\( B \) の列ベクトルを \( \mathbf{b_1}, \dots, \mathbf{b_k} \) として、 \( (A \, B) \) は \( A \) の右に \( B \) を並べて作った \( m \times (n+k) \) 行列 \(\left(\mathbf{a_1} \dots \mathbf{a_n} \, \mathbf{b_1} \dots \mathbf{b_k}\right)\) を表す。
解答
\(AX=B\)が解を持つということは、\(B\)の各列ベクトルが\(A\)の列ベクトルの線形結合で表されることを意味する。
したがって、行列\(A\)の列ベクトルに\(B\)の列ベクトルを加えてもランクは変わらず、\(rank A = rank (AB)\)が成り立つ。
線形部分空間
- 具体例
- i) 2次の実対称行列全体からなる集合が \( M_2(\mathbb{R}) \) の線形部分空間であることを示せ。
- ii) 2次の実正則行列全体からなる集合が \( M_2(\mathbb{R}) \) の線形部分空間ではないことを示せ。
- \( A, B \in S_2(\mathbb{R}) \) ならば \( A + B \in S_2(\mathbb{R}) \) である。
- 任意の実数 \( c \) と \( A \in S_2(\mathbb{R}) \) に対して \( cA \in S_2(\mathbb{R}) \) である。
- \( A, B \in GL_2(\mathbb{R}) \) でも \( A + B \notin GL_2(\mathbb{R}) \) である場合がある。
- \( A \in GL_2(\mathbb{R}) \) でも、任意の実数 \( c \) に対して \( cA \notin GL_2(\mathbb{R}) \) となる場合がある。
(1) 2次の実正方行列全体からなる集合 \( M_2(\mathbb{R}) \) は、行列の和とスカラー倍に対して、実数 \( \mathbb{R} \) 上のベクトル空間となることが知られている。このとき、以下の問い i), ii) に答えよ。
(2) 次の行列 \( A \) について、線形独立な二つの固有ベクトルを任意に選んだとき、それらが必ず直交するものとする。このとき実数 \( \theta \) が満たすべき条件を求めよ。
(1)(i)の解答
2次の実対称行列全体の集合を \( S_2(\mathbb{R}) \) とする。この集合が線形部分空間であることを示すためには、次の2つを示せば十分である。
任意に \( A = \begin{bmatrix} a & b \\ b & d \end{bmatrix} \)、\( B = \begin{bmatrix} e & f \\ f & h \end{bmatrix} \) を \( S_2(\mathbb{R}) \) から取るとする。すると、和 \( A + B \) は次のようになる:
この行列も対称行列であるため、 \( A + B \in S_2(\mathbb{R}) \) である。
次に、任意の実数 \( c \) に対して、行列 \( cA \) は次のようになる:
これも対称行列であるため、\( cA \in S_2(\mathbb{R}) \) である。
以上より、\( S_2(\mathbb{R}) \) は \( M_2(\mathbb{R}) \) の線形部分空間である。
(1)(ii)の解答
2次の実正則行列全体の集合を \( GL_2(\mathbb{R}) \) とする。この集合が \( M_2(\mathbb{R}) \) の線形部分空間でないことを示すためには、次のいずれかを示せばよい。
任意に \( A = \begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} \) と \( B = \begin{bmatrix} -1 & 0 \\ 0 & -1 \end{bmatrix} \) を \( GL_2(\mathbb{R}) \) から取る。すると、和 \( A + B \) は次のようになる:
この行列は正則ではない(行列式が0である)ため、\( A + B \notin GL_2(\mathbb{R}) \) である。
従って、\( GL_2(\mathbb{R}) \) は \( M_2(\mathbb{R}) \) の線形部分空間ではない。
(2)の解答
行列 \( A = \begin{bmatrix} \cos \theta & \sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{bmatrix} \) の固有値を求めるために、固有値 \( \lambda \) に対して次の方程式を解く:
まず、行列 \( A - \lambda I \) を計算する:
この行列の行列式を求めると:
相異なる固有値に対応する固有ベクトルは直交するため、方程式\(\lambda^2 - 2\lambda \cos \theta + 2 \cos^2 \theta - 1 = 0\)が重解を持たなければ良い。
重解を持つのは、以下の場合である。
したがって、求める条件は、\(\theta \neq k \pi\)
グラム行列\(A^T A\)
- 具体例
- 行列 \( A \) を次のように定義する:
\begin{align} A = \begin{pmatrix} x_{11} & x_{12} \\ x_{21} & x_{22} \\ x_{31} & x_{32} \end{pmatrix} \end{align}
- グラム行列 \( A^T A \) は次のように求められる:
\begin{align} A^T A = \begin{pmatrix} x_{11} & x_{21} & x_{31} \\ x_{12} & x_{22} & x_{32} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x_{11} & x_{12} \\ x_{21} & x_{22} \\ x_{31} & x_{32} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x_{11}^2 + x_{21}^2 + x_{31}^2 & x_{11}x_{12} + x_{21}x_{22} + x_{31}x_{32} \\ x_{11}x_{12} + x_{21}x_{22} + x_{31}x_{32} & x_{12}^2 + x_{22}^2 + x_{32}^2 \end{pmatrix} \end{align}
- この行列が正則であることを示すためには、行列 \( A^T A \) の行列式がゼロでないことを確認する必要がある:
\begin{align} \det(A^T A) = \left(x_{11}^2 + x_{21}^2 + x_{31}^2\right)\left(x_{12}^2 + x_{22}^2 + x_{32}^2\right) - \left(x_{11}x_{12} + x_{21}x_{22} + x_{31}x_{32}\right)^2 \end{align}
- ここで、以下のように表すことができる:
\begin{align} \|x_1\|^2 &= x_{11}^2 + x_{21}^2 + x_{31}^2 \\ \|x_2\|^2 &= x_{12}^2 + x_{22}^2 + x_{32}^2 \\ x_1 \cdot x_2 &= x_{11}x_{12} + x_{21}x_{22} + x_{31}x_{32} \\ \end{align}
- すると、行列式は次のようになる:
\begin{align} \det(A^T A) = \|x_1\|^2 \|x_2\|^2 - (x_1 \cdot x_2)^2 \end{align}
- これは、コーシー・シュワルツの不等式より、0以上である。
- コーシー・シュワルツの不等式は、ベクトルの内積の定義を使って、以下のように導かれる:
\begin{align} m \cdot n &= \|m\| \|n\| \cos \theta \\ (m \cdot n)^2 &= \|m\|^2 \|n\|^2 \cos^2 \theta \\ \|m\|^2 \|n\|^2 &\geq (m \cdot n)^2 \end{align}
- したがって、\(\theta = 0, \pi\)のとき、つまり2本のベクトルが互いに他方の定数倍であるときに、コーシー・シュワルツの不等式における等号が成立する。
- 今回は2本のベクトルが互いに他方の定数倍でないため、\( A^T A \)の行列式は必ず正となって、0になることはない。
- よって、\( A^T A \)は正則である。
互いに他方の定数倍ではない3次元空間内の2点 \( x_1, x_2 \in \mathbb{R}^3 \) を考え、これらを横に並べてできる \( 3 \times 2 \) の行列 \( A = (x_1 \ x_2) \) を作る。このとき、\( A^T A \) が正則であることを証明せよ。ここで、\( A^T \) は \( A \) の転置を表す。
直交射影行列
参考にしたサイトは以下のとおり。
射影行列のイメージと楽しい公式 _ 高校数学の美しい物語.html
- 具体例
-
直交射影行列の定義:
行列 \( P \) が直交射影行列であるためには、以下の2つの条件を満たす必要がある。
(1) \( P^2 = P \)(冪等性)
(2) \( P^T = P \)(対称性) -
(1)冪等性の証明:
\begin{align} P^2 &= (A(A^T A)^{-1} A^T)(A(A^T A)^{-1} A^T) \\ &= A(A^T A)^{-1} (A^T A) (A^T A)^{-1} A^T \\ &= A(A^T A)^{-1} A^T \end{align}したがって、\( P^2 = P \)。 -
(2)対称性の証明:
\begin{align} P^T &= (A(A^T A)^{-1} A^T)^T \\ &= (A^T)^T ((A^T A)^{-1})^T A^T \\ &= A (A^T A)^{-1} A^T \end{align}したがって、\( P^T = P \)。 - 以上より、行列 \( P = A(A^T A)^{-1} A^T \) は \( x_1 \) と \( x_2 \) で張られる平面への直交射影行列であることが証明された。
\( 3 \times 2 \) の行列 \( A = (x_1 \ x_2) \) において、\( 3 \times 3 \)行列\( P = A(A^T A)^{-1} A^T \) を作る。 このとき、\(P\)は任意の3次元空間内の点を \( x_1 \) と \( x_2 \) で張られる平面へ垂直に射影(直交射影)することを示せ。
転置
参考にしたサイトは以下のとおり。
転置行列の意味・重要な7つの性質と証明 _ 高校数学の美しい物語.html
- 具体例
- 任意の \(p\) 行列 \(q\)列の行列 \(A\) と \(q\) 行 \(r\) 列の行列 \(B\) に対して、 \((AB)^T = B^T A^T\) であることを証明せよ。
- \(A\) と \(B\) がともに \(p\) 行 \(p\) 列の対称行列のとき、\(AB\) は常に対称行列になるか否か、その理由とともに答えよ。
- 行列 \(A\) が逆行列を持つとする。 \(\lambda\) が \(A\) の固有値であるとき、\(\lambda \neq 0\) であること、 および \(\frac{1}{\lambda}\) は \(A\) の逆行列の固有値であることを証明せよ。
- 実対称行列 \(A\) の固有値が全て正であるとき、 \(B^2 = A\) を満たす行列 \(B\) が存在することを証明せよ。
問題
以下の問いに答えよ。ただし、行列の右肩のTは元の行列の転置であることを示す。
(1)の解答
\(A\)の列数(\(=B\)の行数)を\(n\)とおく。\((AB)^T\)の\(ij\)成分は\(AB\)の\(ji\)成分であるから、\(\sum_{k=1}^{n} a_{jk}b_{ki}\)。 一方、\(B^T A^T\)の\(ij\)成分は\(\sum_{k=1}^{n} b_{ki}a_{jk}\) となり一致する。
(2)の解答
\(A\)と\(B\)が対称行列であれば、\(A^T = A, B^T = B\)が成り立つ。これを(1)で示した\((AB)^T = B^T A^T\)に用いると、
となるため、\(AB\)が対称行列になる、つまり、\((AB)^T = AB\)を満たすには、\(AB = BA\)が成り立つ必要がある。
よって、\(A\)と\(B\)が積に関して可換である場合のみ、\(AB\)は対称行列になる。
(3)の解答
まず、行列\(A\)が逆行列を持つ、つまり、正則行列であるとき、固有値が0でないことを証明する。
\(A\)の固有値\(\lambda\)に対応する固有ベクトルを\(\mathbf{x}\)とすると、定義より\(\mathbf{x} \neq 0\)であり、
とかける。両辺に左から\(A^{-1}\)を掛けると、次のようになる。
ここで、\(\lambda = 0\)と仮定すると、\(\mathbf{x} = 0\)となって、固有ベクトルの定義\(\mathbf{x} \neq 0\)に矛盾する。
よって、\(\lambda \neq 0\)である。
次に、両辺を\(\lambda\)で割って左右を入れ替えると、
を得る。よって、\(A^{-1}\)の固有値は\(\frac{1}{\lambda}\)である。
(4)の解答
実対称行列 \(A\) の固有値が全て正であるとき、\(B^2 = A\) を満たす行列 \(B\) が存在することを証明する。
実対称行列 \(A\) の固有値が全て正であるとき、行列 \(A\) は正定値行列と呼ばれる。正定値行列は必ず一意な正の平方根行列 \(B\) を持つ。具体的には、固有値分解により、
と表すことができる。ここで、\(Q\) は直交行列で、\(\Lambda\) は対角行列であり、その対角成分が \(A\) の固有値である。
各固有値が正であるため、\(\Lambda\) の平方根行列 \(\Lambda^{1/2}\) を考えることができ、
と定義すれば、
が成り立つ。したがって、\(B^2 = A\) を満たす行列 \(B\) が存在することが示された。
対角化
参考にしたサイトは以下のとおり。
同時対角化可能⇔交換可能の意味と証明 _ 高校数学の美しい物語.html
- 具体例
- \( A, B \) が \( P \) により同時対角化可能であるとき、\( AB = BA \) であることを証明せよ。
- \( A \) の固有値がすべて異なり、かつ \( AB = BA \) のとき、\( A, B \) は \( P \) により同時対角化可能であることを証明せよ。
問題
異なる \( n \) 次正方行列 \( A, B \) に対し、\( n \) 次正則行列 \( P \) により \( P^{-1}AP \) および \( P^{-1}BP \) が対角行列となるとき、\( A, B \) は \( P \) により同時対角化可能である、という。以下の問いに答えよ。
(1)の解答
ある正則行列\(P\)が存在して、\(P^{-1} A P\)が対角行列になるとき、行列\(A\)は対角化可能であるという。
ある正則行列\(P\)が存在して、\(P^{-1} A P\)と\(P^{-1} B P\)がともに対角行列になるとき、行列\(A\)と\(B\)は同時対角化可能であるという。
対角行列とは、対角線上の成分以外が0の正方行列である。
したがって、\(A\)と\(B\)が同時対角化可能なとき。ある正則行列\(P\)が存在して、\(P^{-1} A P\)と\(P^{-1} B P\)がともに対角行列になる。
ここで、対角行列同士の積は可換であるため、
となる。これを整理すると、
となり、\(AB = BA\)を得る。
(2)の解答
まず、行列 \( A \) の固有値がすべて異なる場合、\( A \) は対角化可能である。具体的には、\( A \) の固有値を \( \lambda_1, \lambda_2, \dots, \lambda_n \) とし、それに対応する固有ベクトルを \( v_1, v_2, \dots, v_n \) とする。このとき、これらの固有ベクトルは線形独立であり、行列 \( P \) をこれらの固有ベクトルを列に持つ行列として構成すれば、\( P^{-1}AP \) は対角行列 \( D_A \) になる。すなわち、
ここで、\( D_A \) は \( A \) の固有値を対角成分に持つ対角行列である。
次に、可換条件 \( AB = BA \) を考える。この条件の下では、行列 \( B \) は \( A \) と可換であるため、\( B \) は \( A \) の固有空間を保つ。つまり、任意の \( A \) の固有ベクトル \( v_i \) に対して、
が成り立つ。これは、\( Bv_i \) も \( A \) の固有ベクトルであるか、または \( A \) の固有空間内にあることを意味する。
\( A \) の固有値がすべて異なる場合、各固有空間は1次元であるため、各固有ベクトル \( v_i \) に対して \( Bv_i \) は \( v_i \) の定数倍である。すなわち、あるスカラー \( \mu_i \) が存在して、
となる。これにより、\( v_1, v_2, \dots, v_n \) は \( A \) の固有ベクトルであると同時に \( B \) の固有ベクトルでもあることがわかる。
したがって、行列 \( P \) を \( A \) の固有ベクトルを並べた行列として構成すれば、\( P^{-1}AP \) も \( P^{-1}BP \) も対角行列になる。よって、\( A \) と \( B \) は同時対角化可能であることが証明された。
行列のべき乗
参考にしたサイトは以下のとおり。
うさぎでもわかる線形代数 第18羽 対角化を用いた行列のn乗の求め方・行列の無限乗 _ 工業大学生ももやまのうさぎ塾.html
- 具体例
- 1. 固有値の計算
行列 \( A \) の固有値を求めるために、特性方程式の解を求める。
\begin{align} \det(A - \lambda I) = 0 \end{align}行列式を計算すると、
\begin{align} \det \begin{pmatrix} 2 - \lambda & 4 \\ 1 & -1 - \lambda \end{pmatrix} = 0 \end{align}よって、
\begin{align} \lambda^2 - \lambda - 6 = 0 \end{align}この二次方程式の解は、
\begin{align} \lambda_1 = 3, \quad \lambda_2 = -2 \end{align} - 2. 固有ベクトルの計算
固有値 \( \lambda_1 = 3 \) の場合:
\begin{align} (A - 3I)v = 0 \end{align}\begin{align} \begin{pmatrix} -1 & 4 \\ 1 & -4 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = 0 \end{align}この方程式を解くと、
\begin{align} -1x + 4y = 0 \implies x = 4y \end{align}したがって、固有ベクトルは \( v_1 = \begin{pmatrix} 4 \\ 1 \end{pmatrix} \) である。
固有値 \( \lambda_2 = -2 \) の場合:
\begin{align} (A + 2I)v = 0 \end{align}\begin{align} \begin{pmatrix} 4 & 4 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = 0 \end{align}この方程式を解くと、
\begin{align} 4x + 4y = 0 \implies x = -y \end{align}したがって、固有ベクトルは \( v_2 = \begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix} \)である。
- 3. 行列の対角化
行列 \( A \) は次のように対角化できる。\begin{align} A = PDP^{-1} \end{align}ここで、
\begin{align} P = \begin{pmatrix} 4 & 1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix}, \quad D = \begin{pmatrix} 3 & 0 \\ 0 & -2 \end{pmatrix} \end{align} - 4. 行列のべき乗
行列のべき乗 \( A^n \) は次のように計算できる。
\begin{align} A^n = PD^nP^{-1} \end{align}\begin{align} D^n = \begin{pmatrix} 3^n & 0 \\ 0 & (-2)^n \end{pmatrix} \end{align}したがって、
\begin{align} A^n = \begin{pmatrix} 4 & 1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 3^n & 0 \\ 0 & (-2)^n \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \frac{1}{5} & \frac{1}{5} \\ \frac{1}{5} & -\frac{4}{5} \end{pmatrix} \end{align} - 5. \( P^{-1} \) の計算
行列 \( P \) の逆行列を求める。
\begin{align} P^{-1} = \frac{1}{\det P}\begin{pmatrix} -1 & -1 \\ -1 & 4 \end{pmatrix} \end{align}ここで、
\begin{align} \det P = (4 \times (-1)) - (1 \times 1) = -5 \end{align}したがって、
\begin{align} P^{-1} = \frac{1}{-5}\begin{pmatrix} -1 & -1 \\ -1 & 4 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \frac{1}{5} & \frac{1}{5} \\ \frac{1}{5} & -\frac{4}{5} \end{pmatrix} \end{align} - 6. 最終的な結果
行列 \( A^n \) は次のように求められる。
\begin{align} A^n = \begin{pmatrix} 4 & 1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 3^n & 0 \\ 0 & (-2)^n \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \frac{1}{5} & \frac{1}{5} \\ \frac{1}{5} & -\frac{4}{5} \end{pmatrix} \end{align}この結果を具体的に計算することで、行列 \( A^n \) を求めることができる。
次の行列 \( A \) の\(n\)乗を求めよ。
エルミート行列
参考にしたサイトは以下のとおり。
エルミート行列とその性質,ユニタリ対角化の証明 _ 高校数学の美しい物語.html
対称行列の定義と性質~固有値と固有ベクトルの性質 _ 高校数学の美しい物語.html
正定値行列・半正定値行列の定義・性質3つとその証明 _ 数学の景色.html
- 具体例
- エルミート行列\( H \) の固有値が全て実数となることを証明せよ。
- \( H \) の相異なる固有値に対応する固有ベクトル同士が直交することを証明せよ。
- \( H \) の全ての固有値が相異なり、かつ、正であるとき、零ベクトルでない任意の \( n \) 項複素列ベクトル \( \mathbf{x} \) に対して、\( \mathbf{x}^* H \mathbf{x} > 0 \) が成立つことを証明せよ。
- \( H \) の全ての固有値が相異なり、かつ、正であるとき、零ベクトルでない任意の \( n \) 項複素列ベクトル \( \mathbf{x} \) に対して、\( \mathbf{x}^* H^{-1} \mathbf{x} > 0 \) が成立つことを証明せよ。ただし、\( H^{-1} \) は \( H \) の逆行列を表すものとする。
- 固有値を\(\lambda\)、固有ベクトルを\(\mathbf{x}\)とすると、以下のようにかける。
\begin{align} H\mathbf{x} = \lambda\mathbf{x} \end{align}
- 両辺の複素共役転置\(^*\)をとると、以下のようになる。
\begin{align} \mathbf{x}^*H = \overline{\lambda}\mathbf{x}^* \end{align}
- 両辺に右から\(\mathbf{x}\)をかけると、
\begin{align} \mathbf{x}^*H\mathbf{x} &= \overline{\lambda}\mathbf{x}^*\mathbf{x} \\ \mathbf{x}^*\lambda\mathbf{x} &= \overline{\lambda}\mathbf{x}^*\mathbf{x} \\ \lambda\|\mathbf{x}\|^2 &= \overline{\lambda}\|\mathbf{x}\|^2 \\ \end{align}となって、\(\|\mathbf{x}\|^2 \neq 0\)より、固有値は実数である。
- 相異なる固有値 \( \lambda_1, \lambda_2 \) に対応する固有ベクトル \( \mathbf{x}_1, \mathbf{x}_2 \) に対して、次の関係が成り立つ:
\begin{align} H \mathbf{x}_1 = \lambda_1 \mathbf{x}_1 \\ H \mathbf{x}_2 = \lambda_2 \mathbf{x}_2 \end{align}
- 2つ目の式の共役転置をとると、以下のようになる。
\begin{align} \mathbf{x}_2^* H = \lambda_2 \mathbf{x}_2^* \end{align}
- ここで、2次形式\(\mathbf{x}_2^* H \mathbf{x}_1\)に対して2通りの変形をする。
- \(\mathbf{x}_1\)についての式より、\(\mathbf{x}_2^* H \mathbf{x}_1 = \lambda_1 \mathbf{x}_2^* \mathbf{x}_1\)
- \(\mathbf{x}_2^*\)についての式より、\(\mathbf{x}_2^* H \mathbf{x}_1 = \lambda_2 \mathbf{x}_2^* \mathbf{x}_1\)
- よって、\(\mathbf{x}_2^* \mathbf{x}_1 (\lambda_1 - \lambda_2) = 0\)となり、内積\(\mathbf{x}_2^* \mathbf{x}_1\)が0になる。
- エルミート行列\(H\)の固有値分解を、\(H = PDP^{-1}\)とする。
- \(P\)は\(H\)の固有ベクトルのなす正規直交基底をその列ベクトルとして並べて得られるユニタリー行列である。
- \(D\)は対応する固有値を主対角成分に並べた対角行列である。
- ここで、\(y = P^{-1}\)とすると、ユニタリー行列\(P\)は\(P^{-1} = P^*\)が成り立つため、以下のように変形できる。
\begin{align} \mathbf{x}^*H\mathbf{x} = \mathbf{x}^*PDP^{-1}\mathbf{x} = \mathbf{y}^*D\mathbf{y} \end{align}
- したがって、\(\mathbf{y}^*D\mathbf{y} > 0\)を示せばよい。
- 固有値すべて正であることを用いると、\(\mathbf{y}^*D\mathbf{y} = \sum \lambda \|\mathbf{y}\|^2 > 0\)であり、\(\mathbf{x}^*H\mathbf{x} > 0\)が成り立つ。
- (3)と同様に、\(H = PDP^{-1}\)とすると、
\begin{align} H &= PDP^{-1} \\ H^{-1} &= P^{-1} D^{-1} P \end{align}である。
- また、\(y = P\mathbf{x}\)とすると、
\begin{align} \mathbf{y}^* = \mathbf{x}^* P^* = \mathbf{x}^* P^{-1} \end{align}である。
- これらを用いると、\(\mathbf{x}^* H^{-1} \mathbf{x}\)は以下のように変形できる。
\begin{align} \mathbf{x}^* H^{-1} \mathbf{x} = \mathbf{x}^* P^{-1} D^{-1} P \mathbf{x} = \mathbf{y}^*D^{-1} \mathbf{y} \end{align}
- したがって、\(\mathbf{y}^*D^{-1} \mathbf{y} > 0\)を示せばよい。
- 逆行列の固有値は、元の行列の固有値の逆数であるから、(3)と同様に固有値がすべて正であることを用いると、\(\mathbf{x}^* H^{-1} \mathbf{x}\)がいえる。
問題
(1)の解答
(2)の解答
(3)の解答
(4)の解答
二変数関数の停留点
参考にしたサイトは以下のとおり。
【微積分】二変数関数の停留点(極大点・極小点・鞍点).html
極大値・極小値の意味と求め方 _ 高校数学の美しい物語.html
一次近似の意味とよく使う近似公式一覧 _ 高校数学の美しい物語.html
「ヘッセ行列による極値判定②〜ヘッセ行列の符号による極値判定定理、実際に計算してみる〜」【解析学の基礎シリーズ】偏微分編 その10 - 小野研究室.html
- 二変数関数\(f(x, y)\)の停留点\((a_x, a_y)\)を求めることを考える。
- 関数の変化がなくなる点が停留点であるため、停留点では\(x\)方向、\(y\)方向ともにその変化量が0、すなわち
\begin{align} \frac{\partial f(x,y)}{\partial x}=\frac{\partial f(x,y)}{\partial y}=0 \end{align}を満たす点が停留点となる。
- 停留点\((a_x, a_y)\)を求めたら、次はその種類をヘッセ行列により判定する。
- ヘッセ行列は次の式で表される。
\begin{align} \mathsf{H}= \begin{pmatrix}\displaystyle{\frac{\partial^{2} f(x,y)}{\partial x^{2}}}&\displaystyle{\frac{\partial^{2} f(x,y)}{\partial x\partial y}} \\ \\ \displaystyle{\frac{\partial^{2} f(x,y)}{\partial x\partial y}}&\displaystyle{\frac{\partial^{2} f(x,y)}{\partial y^{2}}}\end{pmatrix} \end{align}
- ヘッセ行列に停留点の座標\((a_x, a_y)\)を代入する。
\begin{align} \mathsf{H}= \mathsf{H}_{(a_{x},a_{y})} =\begin{pmatrix}\displaystyle{\left.\frac{\partial^{2} f(x,y)}{\partial x^{2}}\right|_{x=a_{x},y=a_{y}}} &\displaystyle{\left.\frac{\partial^{2} f(x,y)}{\partial x\partial y}\right|_{x=a_{x},y=a_{y}}} \\ \\ \displaystyle{\left.\frac{\partial^{2} f(x,y)}{\partial x\partial y}\right|_{x=a_{x},y=a_{y}}} &\displaystyle{\left.\frac{\partial^{2} f(x,y)}{\partial y^{2}}\right|_{x=a_{x},y=a_{y}}}\end{pmatrix} \end{align}
- この行列の固有値を\(\lambda_{1},\lambda_{2}\)とすると、次のように停留点の種類を判別できる。
\begin{align} \begin{cases} \lambda_{1}>0,\lambda_{2}>0&\to\,\text{極小点}\\ \lambda_{1}<0,\lambda_{2}<0&\to\,\text{極大点}\\ \lambda_{1}\lambda_{2}<0&\to\,\text{鞍点} \end{cases} \end{align}
- 具体例
- 関数 \( f \) がある点で極値(極大値あるいは極小値)を取るならばその点での勾配が零となること、しかし、逆は成り立たないことを示せ。
- 点 \( \mathbf{x_0} \) でのヘッセ行列 \( H(\mathbf{x_0}) \) が正定値であれば、\( f \) はその点で(狭義)極小値を取ることを証明せよ。 ここで、行列 \( A \) が「正定値」であるというのは、任意の非零ベクトル \( \mathbf{x} \) に対して、\( \mathbf{x}^\text{T}A\mathbf{x} > 0 \) となることである。
一階偏微分を求める。
これらの一階偏微分を0に設定して連立方程式を解く。
よって、 \( x = 0 \) または \( x = \frac{1}{54} \) である。
それぞれの場合に対応する \( y \) を求める。
停留点は \( (0, 0) \) と \( \left( \frac{1}{54}, \frac{1}{18} \right) \) である。
次に、二階偏微分を求める。
ヘッセ行列 \( H \) は以下の通りである:
ヘッセ行列の判別式 \( D \) を求める。
停留点 \( (0, 0) \) の場合、
\( D < 0 \) なので、 \( (0, 0) \) は鞍点である。
停留点 \( \left( \frac{1}{54}, \frac{1}{18} \right) \) の場合
\( D > 0 \) かつ \( f_{xx} < 0 \) なので、 \( \left( \frac{1}{54}, \frac{1}{18} \right) \) は極大点である。
問題
集合 \( D \) を \( \mathbb{R}^2 \) の開集合とし、関数 \( f : D \rightarrow \mathbb{R} \) が 2 回連続微分可能であるとする。 さらに、点 \( \mathbf{x_0} = (x_0, y_0)^T \) (\( \text{T} \) は転置)で、勾配は零、つまり、
であるとする。また、点 \( \mathbf{x_0} \) でのヘッセ行列を
とする。
(1)の解答
先に、「関数\(f(x, y)\)がある点\((a, b)\)で極大または極小ならば、\(\mathrm{grad} f = (\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial f}{\partial y})|_{x=a, y=b} = (0, 0) \)」であることを示す。
極大の場合を考えると、\(x\)軸方向も\(y\)軸方向も\((a, b)\)において極大であり、ここで、\(x\)軸方向だけに注目して考える。
\(x = a\)の十分近くでは、\(f(x) \simeq f(a) + (x-a) f'(a)\)と一次近似できる(\(f' = \frac{\partial f}{\partial x}\))。
また、\(x = a\)で極大なら十分小さい\(\epsilon > 0\)に対して
よって、\(f'(a) \leq 0\)かつ\(f'(a) \geq 0\)つまり\(f'(a) = 0\)である。
\(y\)軸方向についても同様の議論が可能であり、極小の場合も同じように示すことができる。
以上より、極値では勾配が0になることを示せた。
次に、逆が成り立たないことを、反例\(f(x, y) = x^3 - 3xy^2\)によって示す。
この関数の一階偏微分を計算すると、
これらをゼロに設定して解くと、勾配がゼロとなる点は \( (0, 0) \) と \( (y^2 = x^2, y = \pm x) \) である。
しかし、点 \( (0, 0) \) では、二階偏微分の計算から、ヘッセ行列の判別式 \( D = f_{xx} f_{yy} - (f_{xy})^2 \) が \( 0 \) であり、この点は鞍点であることがわかる。
したがって、勾配がゼロであっても必ずしも極値が存在するわけではない。
(2)の解答
点\(\mathbf{x_0}\)でのヘッセ行列\(H(\mathbf{x_0})\)が正定値であれば、任意の非零ベクトル\(\mathbf{x}\)に対して\(\mathbf{x}^T H(\mathbf{x_0}) \mathbf{x} > 0\)が成り立つ。
ここで、\(\mathbf{x} = (1, 0)^T\)とすると、\(\mathbf{x}^T H(\mathbf{x_0}) \mathbf{x} = \frac{\partial^2 f}{\partial x^2} > 0\)を得る。
また、\(\mathbf{x} = (0, 1)^T\)とすると、\(\mathbf{x}^T H(\mathbf{x_0}) \mathbf{x} = \frac{\partial^2 f}{\partial y^2} > 0\)を得る。
したがって、関数\(f\)は点\(\mathbf{x_0}\)において\(x\)軸方向、\(y\)軸方向ともに、下に凸である。
よって、\(f'(\mathbf{x_0}) = 0\)であるから、\(f\)は\(\mathbf{x_0}\)で極小値を取る。
二次元極座標変換
参考にしたサイトは以下のとおり。
うさぎでもわかる解析 Part25 極座標変換を用いた2重積分の求め方 _ 工業大学生ももやまのうさぎ塾.html
- \(x\)と\(y\)を次のようにおく。
\begin{align} x = r \cos \theta , \ \ \ y = r \sin \theta \\ \left( r \geqq 0, \ \ 0 \leqq \theta \leqq 2 \pi \right) \end{align}
- このとき、ヤコビアンを計算すると以下のようになる。
\begin{align} J = & \left| \begin{array}{ccc} \frac{\partial x}{\partial r} & \frac{\partial x}{\partial \theta} \\ \frac{\partial y}{\partial r} & \frac{\partial y}{\partial \theta} \end{array} \right| \\ = & \left| \begin{array}{ccc} \cos \theta & - r \sin \theta \\ \sin \theta & r \cos \theta \end{array} \right| \\ = & \ r \left( \cos^2 \theta + \sin^2 \theta \right) \\ = & \ r \end{align}
- よって、\(dxdy = r \ dr d \theta\)となる。
- 具体例
- \(u = r \Rightarrow du = dr\)
- \(dv = e^r dr \Rightarrow v = e^r\)
極座標変換を行う。
内側の積分をまず計算する。
この積分は部分積分を用いて解く。
部分積分の公式: \(\int u dv = uv - \int v du\)
これを\(0\)から\(1\)の範囲で評価する:
したがって、内側の積分の結果は \(1\) である。
次に外側の積分を計算する:
したがって、元の2重積分の結果は:
三次元極座標変換
参考にしたサイトは以下のとおり。
ヤコビ行列,ヤコビアンの定義と極座標の例 _ 高校数学の美しい物語.html
- 具体例
- 原点を中心とする半径 \( r \) の球面上の点の座標 \((x, y, z)\) を、半径 \( r \)、\( z \) 軸回りの回転角 \(\varphi\)、\( x-y \) 平面からの仰角 \(\theta\) の組 \((r, \varphi, \theta)\) を用いた極座標で表せ。
- 前問で求めた写像 \( M: (r, \varphi, \theta) \rightarrow (x, y, z) \) のヤコビアン(ヤコビ行列の行列式)を求めよ。
- \( xz \) 平面において、\(\frac{\pi}{6} \leq \theta \leq \frac{5\pi}{6}, 0 \leq r \leq 1\)で表される扇形の領域を考える。この領域を\(z\)軸周りに回転させてできる回転体の体積を求めよ。
- 球面上の点 \((x, y, z)\) を極座標 \((r, \varphi, \theta)\) で表すと、次のようになる:
\begin{align} x = r \cos \theta \cos \varphi, \quad y = r \cos \theta \sin \varphi, \quad z = r \sin \theta \end{align}
- この変換のヤコビアン行列 \( J \) は次のように表される:
\begin{align} J = \frac{\partial(x, y, z)}{\partial(r, \varphi, \theta)} = \begin{pmatrix} \cos \theta \cos \varphi & -r \cos \theta \sin \varphi & -r \sin \theta \cos \varphi \\ \cos \theta \sin \varphi & r \cos \theta \cos \varphi & -r \sin \theta \sin \varphi \\ \sin \theta & 0 & r \cos \theta \end{pmatrix} \end{align}
- ヤコビアン行列の行列式 \( \det(J) \) は次のように計算される:
\begin{align} \det(J) = r^2 \cos \theta \end{align}
- (2)で求めたヤコビアンを使って一気に極座標の3重積分によって求めると、以下のようになる。
\begin{align} &\int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{\frac{\pi}{6}}\int_{0}^{1}r^2\cos \theta \, dr \, d\theta \, d\varphi \\ = &\int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{\frac{\pi}{6}} \left[ \int_{0}^{1} r^2 \, dr \right] \cos \theta \, d\theta \, d\varphi \\ = &\int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{\frac{\pi}{6}} \left[ \frac{1}{3} \right] \cos \theta \, d\theta \, d\varphi \\ = &\frac{1}{3} \int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{\frac{\pi}{6}} \cos \theta \, d\theta \, d\varphi \\ = &\frac{1}{3} \int_{0}^{2\pi} \left[ \int_{0}^{\frac{\pi}{6}} \cos \theta \, d\theta \right] d\varphi \\ = &\frac{1}{3} \int_{0}^{2\pi} \left[ \sin \theta \right]_{0}^{\frac{\pi}{6}} d\varphi \\ = &\frac{1}{3} \int_{0}^{2\pi} \left[ \frac{1}{2} \right] d\varphi \\ = &\frac{1}{6} \int_{0}^{2\pi} d\varphi \\ = &\frac{1}{6} \left[ \varphi \right]_{0}^{2\pi} \\ = &\frac{\pi}{3} \end{align}
- 回転体をドーム(上側)と円錐(下側)に分解して解くと、以下のようになる。
\begin{align} &\pi \times (\frac{\sqrt{3}}{2})^2 \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} + \int_{\frac{1}{2}}^{1} \pi \times (\sqrt{1-z^2})^2 \, dz = \frac{\pi}{8} + \frac{5\pi}{24} = \frac{\pi}{3} \end{align}
問題
(1)の解答
(2)の解答
(3)の解答
2通りで求める。
双曲線関数(cosh, sinh, tanh)
参考にしたサイトは以下のとおり。
双曲線関数(sinh,cosh,tanh)の意味・性質・楽しい話題まとめ _ 高校数学の美しい物語.html
線形部分空間の定義|証明のテンプレートも例題に沿って紹介 – あーるえぬ.html
部分空間の証明と基底_次元の求め方を分かりやすく解説!(線形空間).html
- 双曲線関数は、以下のように定義される。
- \(\cosh x = \frac{e^x+e^{-x}}{2}\)
- \(\sinh x = \frac{e^x-e^{-x}}{2}\)
- \(\tanh x = \frac{\sinh x}{\cosh x} = \frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}\)
- 双曲線関数について、以下の関係式が成り立つ。
- \(\cosh^2 x - \sinh^2 x = 1\)
- \(1 - \tanh^2 x = \frac{1}{\cosh^2 x}\)
- \(1 - \frac{1}{\tanh^2 x} = -\frac{1}{\sinh^2 x}\)
- 双曲線関数を微分すると、以下のようになる。
- \((\cosh x)'=\sinh x\)
- \((\sinh x)'=\cosh x\)
- \((\tanh x)'=\frac{1}{\cosh^2 x}\)
- 双曲線関数を積分すると、以下のようになる。
- \(\int \cosh x \, dx = \sinh x + C\)
- \(\int \sinh x \, dx = \cosh x + C\)
- \(\int \tanh x \, dx = \log( \cosh x) + C\)
- 具体例
- \(F(I)\) が \(C^∞(I)\) の部分集合となることを証明せよ。
- \(F(I)\) が \(C^∞(I)\) の部分集合であることを証明するには、すべての\(x\)について、\(x \in F(I)\)ならば\(x \in C^∞(I)\)であることを示せばよい。
- したがって、\( F(I) \) の任意の要素\(x\)が無限回微分可能であることを示す。具体的には、\( F(I) \) の任意の要素は次の形をしている:
\[ f(x) = a \cosh x + b \sinh x \]
- ここで、\( a \) および \( b \) は実数定数である。この関数の導関数は、次のように計算される:
\[ f'(x) = a \sinh x + b \cosh x \]
- さらに、二階導関数は:
\[ f''(x) = a \cosh x + b \sinh x \]
- つまり、\( f(x) \) の任意の階の導関数は再び \( a \cosh x + b \sinh x \) の形になる。したがって、\( f(x) \) は無限回微分可能であり、\( C^\infty(I) \) に属する。
- よって、\( F(I) \subseteq C^\infty(I) \) が成り立つことが示された。
- \(F(I)\) が \(C^∞(I)\) の線形部分空間となることを証明せよ。
- 線形部分空間であるためには、以下の条件を満たす必要がある:
- 関数の加法が閉じていること。
- 関数のスカラー倍が閉じていること。
- まず、任意の \( f_1(x), f_2(x) \in F(I) \) を取り、それぞれ次のように表す:
\[ f_1(x) = a_1 \cosh x + b_1 \sinh x \]\[ f_2(x) = a_2 \cosh x + b_2 \sinh x \]
- これらの和を計算する:
\begin{align} f_1(x) + f_2(x) &= (a_1 \cosh x + b_1 \sinh x) + (a_2 \cosh x + b_2 \sinh x) \\ &= (a_1 + a_2) \cosh x + (b_1 + b_2) \sinh x \end{align}
- ここで、\( a_1 + a_2 \) および \( b_1 + b_2 \) も実数であるため、\( f_1(x) + f_2(x) \in F(I) \) であることがわかる。したがって、加法は閉じている。
- 次に、任意の \( f(x) \in F(I) \) とスカラー \( c \in \mathbb{R} \) を取り、それぞれ次のように表す:
\[ f(x) = a \cosh x + b \sinh x \]
- これのスカラー倍を計算する:
- ここで、\( ca \) および \( cb \) も実数であるため、\( c f(x) \in F(I) \) であることがわかる。したがって、スカラー倍も閉じている。
- これにより、\( F(I) \) が \( C^\infty(I) \) の線形部分空間であることが示された。
- \(\cosh x\)と\(\sinh x\)が、上で定義した内積に関して直交することを証明せよ。
- 内積を計算する:
\begin{align} \langle \cosh x, \sinh x \rangle = \int_{-1}^{1} \cosh(x) \sinh(x) \, dx \end{align}
- 定義により、\( \cosh(x) = \frac{e^x + e^{-x}}{2} \)、\( \sinh(x) = \frac{e^x - e^{-x}}{2} \) である。これを使って積を計算する。
\begin{align} \cosh(x) \sinh(x) = \left(\frac{e^x + e^{-x}}{2}\right)\left(\frac{e^x - e^{-x}}{2}\right) = \frac{e^{2x} - e^{-2x}}{4} \end{align}
- これを内積の定義に従って積分する。
\begin{align} \langle \cosh x, \sinh x \rangle = \int_{-1}^{1} \frac{e^{2x} - e^{-2x}}{4} \, dx \end{align}
- 積分を計算する。
\begin{align} \frac{1}{4} \int_{-1}^{1} e^{2x} \, dx - \frac{1}{4} \int_{-1}^{1} e^{-2x} \, dx &= \frac{1}{4} \left[ \frac{e^{2x}}{2} \right]_{-1}^{1} - \frac{1}{4} \left[ -\frac{e^{-2x}}{2} \right]_{-1}^{1} \\ &= \frac{1}{4} \left( \frac{e^2 - e^{-2}}{2} \right) - \frac{1}{4} \left( \frac{e^{-2} - e^2}{2} \right) \\ &= \frac{1}{8} (e^2 - e^{-2}) - \frac{1}{8} (e^{-2} - e^2) \\ &= \frac{1}{8} (e^2 - e^{-2} - e^{-2} + e^2) = \frac{1}{8} (2e^2 - 2e^{-2}) = 0 \end{align}
- したがって、\( \cosh x \) と\( \sinh x \) は直交することが示された。
- 関数の組\(\{\cosh x, \sinh x\}\)が\(F(I)\)の基底となることを証明せよ。
- 関数の組 \( \{ \cosh x, \sinh x \} \) が基底であるための条件:
- 一次独立であること。
- \( F(I) \) を生成すること。
- 1. 一次独立性の証明
- 関数 \( \cosh x \)と \( \sinh x \)が一次独立であることを示すには、任意の定数 \( a \)および\( b \)に対して次の関係式が成り立つ場合に\( a = 0 \) および\( b = 0 \) であることを証明する:
\begin{align} a \cosh x + b \sinh x = 0 \end{align}
- この式は全ての \( x \) に対して成り立つと仮定する。特に、\( x = 0 \)のとき、
\( \cosh(0) = 1 \) および \( \sinh(0) = 0 \) なので、
\begin{align} a \cosh(0) + b \sinh(0) = a \cdot 1 + b \cdot 0 = a = 0 \end{align}
- 次に、\( x = 1 \) のとき、
\( \cosh(1) \) および \( \sinh(1) \) なので、
\begin{align} a \cosh(1) + b \sinh(1) = 0 \end{align}
- 既に \( a = 0 \) であることを示しているので、残りの式は次のようになる:
\begin{align} b \sinh(1) = 0 \end{align}
- ここで、\( \sinh(1) \neq 0 \) であるため、
\begin{align} b = 0 \end{align}
- したがって、\( \cosh x \) と \( \sinh x \) は一次独立である。
- 関数 \( \cosh x \)と \( \sinh x \)が一次独立であることを示すには、任意の定数 \( a \)および\( b \)に対して次の関係式が成り立つ場合に\( a = 0 \) および\( b = 0 \) であることを証明する:
- 2. 生成性の証明
- \( F(I) \) が \( \{ \cosh x, \sinh x \} \) によって生成されることを示すには、任意の関数 \( f(x) \in F(I) \) が \( \cosh x \) および \( \sinh x \) の線形結合として表現できることを示す必要がある。
- \( F(I) \) の定義によれば、任意の関数 \( f(x) \in F(I) \) は次の形式で表現できる:
\begin{align} f(x) = a \cosh x + b \sinh x \end{align}ここで、\( a \) および \( b \) は実数である。
- 任意の \( f(x) \in F(I) \) を取ると、\( f(x) \) は常にこの形式で表現できる。これにより、\( \{ \cosh x, \sinh x \} \) が \( F(I) \) を生成することが示された。
- 微分が、\(F(I)\)から\(F(I)\)への線形写像となることを証明せよ。
- 微分が線形写像であるためには、次の2つの条件を満たす必要がある。
- 線形性の保持:
\begin{align} D(af + bg) = aD(f) + bD(g)\end{align}ここで、\( f, g \in F(I) \) であり、\( a, b \in \mathbb{R} \) である。
- 関数 \begin{align} f(x) = a \cosh x + b \sinh x \in F(I) \end{align}に対する微分が再び \( F(I) \) に属すること。
- まず、線形性の保持を確認する。
\( D(af + bg) = D(a \cosh x + b \sinh x) = aD(\cosh x) + bD(\sinh x) \) - 次に、微分を計算する。
\begin{align} D(\cosh x) = \sinh x \\ D(\sinh x) = \cosh x \end{align}
- したがって、
\begin{align} D(a \cosh x + b \sinh x) = a \sinh x + b \cosh x \in F(I) \end{align}
- 以上より、微分が \( F(I) \)から \( F(I) \) への線形写像であることが示された。
問題
開区間 \(I := [-1, 1]\) で定義された、無限回微分可能な実数値関数全体からなる集合 \(C^∞(I)\) は、 通常の関数の和と定数倍に関して線形空間(ベクトル空間)をなす。また、任意の \(f(x), g(x) ∈ C^∞(I)\) に対して
によって定義する。ここで、\(\mathbb{R}\) は実数全体からなる集合を表す。以下の設問に答えよ。
逆三角関数\(\cos^{-1}, \sin^{-1}, \tan^{-1}\)
参考にしたサイトは以下のとおり。
うさぎでもわかる解析 Part02 逆三角関数 _ 工業大学生ももやまのうさぎ塾.html
- 具体例
- 調和関数とは、ラプラス方程式
\begin{align} \frac{\partial^2 f}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 f}{\partial y^2} = 0 \end{align}を満たす関数のことである。 - \( x \) に関する1次偏微分
\begin{align} \frac{\partial f}{\partial x} &= \frac{\partial}{\partial x} \tan^{-1} \left( \frac{y}{x} \right) \\ &= \frac{1}{1 + \left( \frac{y}{x} \right)^2} \cdot \frac{\partial}{\partial x} \left( \frac{y}{x} \right) \\ &= \frac{1}{1 + \left( \frac{y}{x} \right)^2} \cdot \left( -\frac{y}{x^2} \right) \\ &= \frac{-y}{x^2 + y^2} \end{align} - \( y \) に関する1次偏微分
\begin{align} \frac{\partial f}{\partial y} &= \frac{\partial}{\partial y} \tan^{-1} \left( \frac{y}{x} \right) \\ &= \frac{1}{1 + \left( \frac{y}{x} \right)^2} \cdot \frac{\partial}{\partial y} \left( \frac{y}{x} \right) \\ &= \frac{1}{1 + \left( \frac{y}{x} \right)^2} \cdot \left( \frac{1}{x} \right) \\ &= \frac{x}{x^2 + y^2} \end{align} - \( x \) に関する2次偏微分
\begin{align} \frac{\partial^2 f}{\partial x^2} = \frac{\partial}{\partial x} \left( \frac{-y}{x^2 + y^2} \right) \end{align}まず、以下の部分を計算する。
\begin{align} \frac{\partial}{\partial x} \left( \frac{1}{x^2 + y^2} \right) = -\frac{2x}{(x^2 + y^2)^2} \end{align}これを使って、2次偏微分を求める。
\begin{align} \frac{\partial^2 f}{\partial x^2} = -y \cdot \left( -\frac{2x}{(x^2 + y^2)^2} \right) = \frac{2xy}{(x^2 + y^2)^2} \end{align} - \( y \) に関する2次偏微分
\begin{align} \frac{\partial^2 f}{\partial y^2} = \frac{\partial}{\partial y} \left( \frac{x}{x^2 + y^2} \right) \end{align}同様に、まずは以下の部分を計算する。
\begin{align} \frac{\partial}{\partial y} \left( \frac{1}{x^2 + y^2} \right) = -\frac{2y}{(x^2 + y^2)^2} \end{align}これを使って、2次偏微分を求める。
\begin{align} \frac{\partial^2 f}{\partial y^2} = x \cdot \left( -\frac{2y}{(x^2 + y^2)^2} \right) = -\frac{2xy}{(x^2 + y^2)^2} \end{align} - 調和関数の条件を確認
\begin{align} \frac{\partial^2 f}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 f}{\partial y^2} = \frac{2xy}{(x^2 + y^2)^2} - \frac{2xy}{(x^2 + y^2)^2} = 0 \end{align}よって、\( f(x, y) = \tan^{-1} \left( \frac{y}{x} \right) \) が調和関数であることが証明された。
問題:関数 \( f(x, y) = \tan^{-1} \left( \frac{y}{x} \right) \) が調和関数であることを示せ。
マクローリン展開
参考にしたサイトは以下のとおり。
- 定義
- マクローリン展開(Maclaurin series)は、関数を原点(\( x = 0 \))周りでテイラー展開する特別なケースである。これは、関数を無限級数として表現する方法であり、関数の各点での値や導関数の値を利用して関数を近似する。
- マクローリン展開は次のように定義される:
- この定義を ∑(シグマ)記号を使って表現すると、以下のようになる:
- 例
- 1. \(\sin x\) のマクローリン展開
- \begin{align} \sin x = x - \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} - \frac{x^7}{7!} + \cdots \end{align}
- \begin{align} \sin x = \sum_{n=0}^{\infty} (-1)^n \frac{x^{2n+1}}{(2n+1)!} \end{align}
- 2. \(\cos x\) のマクローリン展開
- \begin{align} \cos x = 1 - \frac{x^2}{2!} + \frac{x^4}{4!} - \frac{x^6}{6!} + \cdots \end{align}
- \begin{align} \cos x = \sum_{n=0}^{\infty} (-1)^n \frac{x^{2n}}{(2n)!} \end{align}
- 3. \( e^x \) のマクローリン展開
- \begin{align} e^x = 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \cdots \end{align}
- \begin{align} e^x = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!} \end{align}
- 4. \(\ln(1 + x)\) のマクローリン展開
- \begin{align} \ln(1 + x) = x - \frac{x^2}{2} + \frac{x^3}{3} - \frac{x^4}{4} + \cdots \end{align}
- \begin{align} \ln(1 + x) = \sum_{n=1}^{\infty} (-1)^{n+1} \frac{x^n}{n} \end{align}
テイラー展開
参考にしたサイトは以下のとおり。
テイラー展開・マクローリン展開とは【解析的な関数と具体例】 _ 数学の景色.html
- 定義
- テイラー展開(Taylor series)は、関数をある点 \( a \) の周りで無限級数として表現する方法である。この方法は、関数の各点での値や導関数の値を利用して関数を近似する。
- テイラー展開は次のように定義される:
- この定義を ∑(シグマ)記号を使って表現すると、以下のようになる:
- 例
- 代表的な関数のテイラー展開をいくつか紹介する。
- \begin{align} e^x = 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \cdots \end{align}
- \begin{align} e^x = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!} \end{align}
- \begin{align} \ln(1 + x) = x - \frac{x^2}{2} + \frac{x^3}{3} - \frac{x^4}{4} + \cdots \end{align}
- \begin{align} \ln(1 + x) = \sum_{n=1}^{\infty} (-1)^{n+1} \frac{x^n}{n} \end{align}
級数
- 具体例
-
元の命題: \( a_n は0に収束する ⟹ s_n は有限確定値に収束する \)
偽。反例として、\( a_n = \frac{1}{n} \) を考える。\( a_n \) は0に収束するが、\( s_n = \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{k} \) は発散する。
-
逆の命題: \( s_n は有限確定値に収束する ⟹ a_n は0に収束する \)
真。数列 \( s_n \) が有限確定値に収束する場合、収束のための必要条件として \( a_n \) は0に収束しなければならない。
-
裏の命題: \( a_n は0に収束しない ⟹ s_n は有限確定値に収束しない \)
真。もし \( a_n \) が0に収束しない場合、\( a_n \) が無限に大きくなる可能性があり、その結果 \( s_n \) は有限確定値に収束しない。
-
対偶の命題: \( s_n は有限確定値に収束しない ⟹ a_n は0に収束しない \)
偽。この命題は元の命題と論理的に同値である。
- 具体例
- これは、「P のすべての x に対して、P のある y が存在し、x はその y を好きである」という意味である。
- 言い換えると、「P のすべての人には、好きな人がいる」ということを表している。
- これは、「P のある y が存在し、P のすべての x がその y を好きである」という意味である。
- 言い換えると、「P の中には、みんなから好かれている特定の人がいる」ということを表している。
- A と B は等価ではない。A は「すべての人が誰かを好きである」という意味であり、B は「ある特定の人が全員から好かれている」という意味である。
- これらは異なる状況を表している。
- B は A を含意するが、A は B を含意しない。具体的には、もし P の中に全員から好かれている特定の人 y が存在すれば(B が真である場合)、P のすべての人 x はその y を好きであるため、P のすべての人には好きな人がいるということになる(A も真になる)。
- しかし、P のすべての人が好きな人を持っているというだけでは(A が真である場合)、それが全員から好かれている特定の一人だとは限らないため、B が必ずしも真であるとは限らない。
- 具体例
- まず、用語を確認する。
- \(\max f(x)\):関数 \( f(x) \) の最大値である。これは \( f(x) \) の値の中で最も大きい値が存在する場合を指す。
- \(\sup f(x)\):関数 \( f(x) \) の上限(最小の上界)である。これは \( f(x) \) の値がどんなに近づいてもそれ以上にはならない最大の値を指すが、その値を \( f(x) \) が実際に取る必要はない。
- ここで、関数 \( f(x) \) の最大値が存在せず、上限が存在する例を示す。
- 関数 \( f(x) = 1 - \frac{1}{x} \) を考える。この関数の定義域を \( 0 < x < 1 \) とする。
- 関数の挙動を確認する:
- \( x \) が \( 0 \) に近づくと、\( f(x) \) は非常に小さくなり、負の無限大に近づく。
- \( x \) が \( 1 \) に近づくと、\( f(x) \) は \( 0 \) に近づく。
- 最大値が存在しないことを確認する:
関数 \( f(x) \) は定義域 \( 0 < x < 1 \) のどの点でも最大値を取らない。これは、\( x = 1 \) の点が定義域に含まれていないため、\( f(x) \) が \( x = 1 \) のときに取る値である \( 1 \) を取ることがないからである。
- 上限が存在することを確認する:
関数 \( f(x) \) の上限は \( 1 \) である。なぜなら、\( f(x) \) の値は \( 1 \) 未満であり、どんなに \( x \) が \( 1 \) に近づいても \( 1 \) を超えないからである。しかし、関数 \( f(x) \) は \( 1 \) という値を実際には取らない(\( x \) が \( 1 \) のときの \( f(x) \) の値は定義域に含まれないため)。
- したがって、連続実関数 \( f(x) = 1 - \frac{1}{x} \) を定義域 \( 0 < x < 1 \) において考えると、\(\max f(x)\) が存在せず \(\sup f(x)\) が存在する例となる。
- 具体例
- 微分可能性と連続性:
関数 \( f(x) \) が閉区間 \([a, b]\) で微分可能であるということは、\( f(x) \) がこの区間で連続であることを意味する。
- 導関数の符号:
\( f(x) \) の導関数 \( f'(x) \) が \( (a, b) \) の任意の点 \( x \) で \( f'(x) > 0 \) である。これは、\( f(x) \) が任意の点 \( x \) において増加していることを意味する。
- 単調増加の定義:
関数 \( f(x) \) が単調増加であるとは、任意の \( a \leq x_1 < x_2 \leq b \) に対して、\( f(x_1) \leq f(x_2) \) であることを意味する。
- 平均値の定理の適用:
平均値の定理によれば、閉区間 \([x_1, x_2] \subset [a, b]\) の任意の \( x_1 < x_2 \) に対して、ある \( c \in (x_1, x_2) \) が存在し、 \( f'(c) = \frac{f(x_2) - f(x_1)}{x_2 - x_1} \) となる。
- 導関数の正の値からの結論:
仮定より、\( f'(c) > 0 \) である。したがって、 \( \frac{f(x_2) - f(x_1)}{x_2 - x_1} > 0 \) となり、これから \( f(x_2) - f(x_1) > 0 \) が導かれる。つまり、 \( f(x_2) > f(x_1) \) である。
- 結論:
任意の \( a \leq x_1 < x_2 \leq b \) に対して \( f(x_1) < f(x_2) \) であるため、\( f(x) \) は閉区間 \([a, b]\) で単調増加である。
- 具体例
- \( I_0 \), \( I_1 \) を求めよ。
- \( I_n \) についての漸化式を示せ。
- \( I_n \) を求めよ。
- \( J_k = \frac{1}{I_{k-1} I_k}\)(ただし、\( k \geq 1 \))とする。\( \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^{n} \frac{n}{n^2 + J_k^2} \) を求めよ。
- 具体例
-
\begin{align} \frac{d^3}{dx^3} y + 27 y = x \end{align}
-
\begin{align} \frac{d^2}{dx^2} f(x) - (a + b) \frac{d}{dx} f(x) + ab f(x) = 0 \end{align}
- 具体例
- \( x = y \) の場合: \( 2x^2 = 4 \) より \( x = y = \pm \sqrt{2} \) となる。
- \( x = -y \) の場合: \( 2x^2 = 4 \) より \( x = \pm \sqrt{2}, y = \mp \sqrt{2} \) となる。
- \( x = \sqrt{2}, y = \sqrt{2}, z = 0 \) のとき: \( f(x, y, z) = 4 \)
- \( x = \sqrt{2}, y = -\sqrt{2}, z = 0 \) のとき: \( f(x, y, z) = 0 \)
- \( x = 0, y = 0, z = \pm \sqrt{2} \) のとき: \( f(x, y, z) = 8 \)
数列
述語論理
問題
人の集合 P と述語 LOVES(x, y)(意味は「x は y を好きである」)に対して、次の二つの述語論理式 A および B の関係を述べよ(等価、含意、など)。
\(A: ∀x ∈ P ∃y ∈ P \ LOVES(x, y)\)
\(B: ∃y ∈ P ∀x ∈ P \ LOVES(x, y)\)
解答
各述語論理式の意味を説明する。
\(A: ∀x ∈ P ∃y ∈ P \ LOVES(x, y)\)
\(B: ∃y ∈ P ∀x ∈ P \ LOVES(x, y)\)
これら二つの述語論理式の関係について説明する。
1. 等価 (Equivalence):
2. 含意 (Implication):
以上のことから、B は A を含意するが、A は B を含意しないという関係がある。
\(\sup, \inf\)
連続実関数 \( f(x) \) において \(\max f(x)\) が存在せず \(\sup f(x)\) が存在するような \( f(x) \) と \( x \) の区間の例を示せ。
平均値の定理
閉区間 \([a, b]\) で微分可能で \(f'(x) > 0\) である実数値関数 \(f(x)\) は \([a, b]\) で単調増加であることを示せ。
以上により、閉区間 \([a, b]\) で微分可能で \( f'(x) > 0 \) である実数値関数 \( f(x) \) は \([a, b]\) で単調増加であることが示された。
ウォリス積分(\(\sin^n, \cos^n\)の積分)
参考にしたサイトは以下のとおり。
ウォリス積分~sinのn乗,cosのn乗の積分公式 _ 高校数学の美しい物語.html
問題
\[ I_n = \int_0^{\pi/2} \sin^n{x} \, dx \] とする。以下の問いに答えよ。ただし、\( n \) は非負の整数である。
(1)の解答
\(I_0 = \frac{\pi}{2}, I_1 = 1\)
(2)の解答
\(I_n\)を、部分積分により計算すると、以下のようになる。
よって、以下の漸化式が成立する。
(3)の解答
\( n \) が奇数のとき、
\( n \) が偶数のとき、
(4)の解答
\(I_{k-1} I_{k}\)は、計算すると、\(k\)の偶奇にかかわらず\(\frac{\pi}{2k}\)となる。
したがって、\(J_k = \frac{2k}{\pi}\)であり、区分求積法を用いて、与式は以下のように変形できる。
微分方程式
参考にしたサイトは以下のとおり。
【全9パターン網羅】微分方程式の解法一覧 _ 艮電算術研究所.html
問題
以下の微分方程式の一般解を求めよ。ただし、\(a, b\)は相異なる非零の実数とする。
(1)の解答
同次形\(\frac{d^3}{dx^3} y + 27 y = 0\)の特性方程式
より、\(k = -3, \frac{3 \pm 3 \sqrt{3} i}{2}\)。
よって、同次方程式の一般解は、
さらに、与式の右辺の形から特解の形を推測して、\(y = mx + n\)を与式に代入すると、
となるので、\(m = \frac{1}{27}, n = 0\)。
よって、非同次方程式の特解は、\(y = \frac{1}{27} x\)。
非同次方程式の一般解は、非同次方程式の特解と同次方程式の一般解の和として表されるから、
となる(途中、オイラーの公式\(e^{\alpha + i \beta} = e^{\alpha} (\cos \beta + i \sin \beta)\)を用いた)。
(2)の解答
特性方程式は\(k^2 - (a+b)k + ab\)であり、\(k = a, b\)となる。
よって、一般解は\(y = C_1 e^{ax} + C_2 e^{bx}\)である(\(C_1, C_2\)は任意定数)。
ラグランジュの未定乗数法
参考にしたサイトは以下のとおり。
ラグランジュの未定乗数法と例題 _ 高校数学の美しい物語.html
問題
関数 \( f(x, y, z) = \frac{x^2}{2} + xy + \frac{y^2}{2} + 2z^2 \) の最大値と最小値を、制約条件 \( g(x, y, z) = x^2 + y^2 + z^2 - 4 = 0 \) のもとで求めよ。
解答
ラグランジュ関数 \( \mathcal{L}(x, y, z, \lambda) \) を次のように定義する。
ラグランジュ関数を \( x, y, z, \lambda \) で偏微分し、それぞれがゼロとなる条件を導く。
まず \( z \) についての方程式 \( (4 - 2\lambda)z = 0 \) から、\( z = 0 \) もしくは \( \lambda = 2 \) となる。
1. \( z = 0 \) の場合:
このとき、残りの方程式は次のようになる。
これを解くと、\( x = \pm y \) を得る。
2. \( \lambda = 2 \) の場合:
このとき、制約条件 \( x^2 + y^2 + z^2 = 4 \) から \( z = 2 \) が導かれる。このとき \( x = y = 0 \) である。
これらの解を関数 \( f(x, y, z) \) に代入して、それぞれの値を計算する。
以上より、最大値は 8、最小値は 0 となる。